老後の不安が完全になくなったわけではないのに、以前ほど日常の中で大きな位置を占めなくなっていることに気づく場合があります。考えないようにしているわけでも、無理に忘れようとしているわけでもありません。ただ、生活の中での重さが少し変わってきている感覚です。
以前は、ふとした瞬間に老後のことが頭を占め、そのまま気持ちが引っ張られてしまうことがありました。何をしていても、どこかで不安が顔を出し、日常と切り離せないように感じる場面もあったと思います。
いまは、老後について考えることがあっても、そのまま別のことに意識が戻ることがあります。不安が浮かんでも、生活全体を覆うほどには広がらない。そんな変化に気づくことがあります。
この状態は、不安に慣れたというより、不安との距離が少し取れるようになってきた感覚に近いのかもしれません。消そうとしなくても、常に意識の中心に置かなくてもいい状態です。
老後の不安があること自体は変わっていません。ただ、それが生活のすべてを決める要素ではなくなってきている。ほかの出来事や関心と並んで、日常の一部として存在しているように感じられることがあります。
この変化に、特別な名前をつける必要はありません。ただ、以前とは少し違う場所に立っている感覚がある。それだけでも、十分なのかもしれません。
老後の不安は残っているけれど、前ほど生活を占領しなくなったとき、それは不安が消えたという話ではなく、生活が少し広がってきている途中の状態なのだと思います。
※この記事は、シリーズ「老後の不安を、そのまま辿る」の一部です。
前の記事

老後のことを、全部考えなくてもいいと思い始めるとき
老後のことについて考えていると、ある時ふと、すべてを一度に考えなくてもいいのではないかと思い始めることがあります。考えな...
