老後のことを考えようとしたとき、最初は漠然とした不安だったはずなのに、気づけばお金、健康、住まいと、複数の心配事が同時に頭に浮かんでくることがあります。
一つひとつは別の問題のはずなのに、考え始めた途端、まとめて重くのしかかってくるように感じられる。考える対象そのものが一気に増えてしまい、頭の中が整理できなくなる感覚に近いかもしれません。
この重さは、不安が急に増えたから生じているわけではありません。老後というテーマが、複数の要素を同時に含んでいることで、考える対象が一気に広がりやすくなっている状態です。
将来の生活を思い浮かべると、収入がどうなるのか、体調はどの程度変化するのか、住まいは今のままで支障がないのかと、いくつもの条件が並行して意識に上ります。
お金のことだけを切り離して考えようとしても、健康の状態によって必要な支出は変わります。住まいについても、体の状態や生活のペースと無関係ではいられません。それぞれを別々に考えているつもりでも、実際には結びついたまま意識されやすいテーマです。
考える対象が重なった状態では、一つの心配を整理しようとしただけでも、別の心配が同時に浮かびやすくなります。その結果、不安の量が増えたように感じられることがあります。
ただ、実際に問題が増えたわけではありません。「老後」という言葉の中に、複数のテーマが一度に入ってきている。その負荷を、そのまま受け取っている状態に近いのかもしれません。
こうしたとき、何から考えればいいのかわからなくなるのは、判断力や意識の問題ではありません。考える対象が、一度に広がっていることによる自然な反応とも言えます。
老後の不安を考え始めたときに、お金、健康、住まいが同時に重く感じられるのは、それぞれを切り分ける前に、一つの大きなテーマとして抱えているためです。いま感じている重さが、何か一つの問題ではなく、複数の考えが同時に浮かんでいる状態だと分かるだけでも、受け止め方が少し変わることがあります。
※この記事は、シリーズ「老後の不安を、そのまま辿る」の一部です。
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